4年に1度、電気利用者のご自宅を訪問して行われる「電気安全調査」。皆さんのご自宅にも必ず来ているはずです。
しかしこの「電気安全調査」に不安や疑問を持つ方が大勢います。
「知らない人を家に入れるのが嫌」
「詐欺や犯罪に巻き込まれそうで怖い」
「点検なんかしなくても大丈夫」
皆さんもそう感じたことはありませんか?
しかしこの「電気安全調査」、非常に重要な役割を担っています。電気設備の点検、不備の指摘を行うことで漏電等による事故や火災を未然に防いでいるのです。
今回はこの電気安全調査を行なっている「九州電気保安協会※」の職員さんに、皆さんが感じている不安や疑問ついて答えていただきました。
※九州電気保安協会が電気安全調査を行わない地域もあります。
電気安全調査についてのQ&A
電気安全調査の目的を教えてください。
A:電気安全調査の目的は、電気を使用しているお客さまに「安全・安心」をお届けすることです。
そのために、定期的(4年に1回以上)にご自宅を訪問し、電気設備の安全調査や電気の正しい使い方のアドバイスを行なっています。この調査は法律で定められたものであり、当調査で調査費用を頂くことはありません。
そしてもう一つ、“啓発”も大きな目的です。
電気安全調査を通して、一人でも多くのお客様に「電気を安全に使ってもらうこと」を意識してもらいたいと考えています。
調査終了後には電気の安全な使い方等が記載された啓発本「電気安全パンフレット」をお配りしておりますので、ぜひご覧ください。
どんな調査をするのですか?所要時間も知りたいのですが。
A:調査は「電気事業法」に基づき、
- お客様の電気設備が定められた基準通りに設置されているか
- 電気の間違った使い方をされていないか
- 漏電などの不具合が発生していないか
等を調査します。
屋外、屋内両方の調査を行いますが、コロナ禍である現在は、お客様のご希望を優先しています。屋外調査のみでも構いません。
調査時間は、住宅の規模によって若干差が出ますが、屋外・屋内合わせて10分程度です。ただし、漏電調査を行った際に漏電の疑いがあれば、宅内を停電させて詳細な調査を行います。その場合は長引くことがありますのでご了承ください。
電気安全調査の流れを教えてください
A:下記6つのステップになります。
【ステップ1】電気安全調査お知らせ票の配付
電気安全調査にお伺いするお客様のもとには、事前にお知らせ票を配付しております。「いつ頃くるか」の目安になるかと思います。
(初回訪問連絡票)
(お知らせ票)
<お知らせ票にある記載(一部)>
- 訪問までの目安
- 調査させていただく場所のご案内
- よくあるお問い合わせ内容
※離島や集合住宅など一部対象外の配付先があります。
【ステップ2】 事前訪問
お客様の不安を少しでも取り除くために、事前訪問を行なっています。
<事前訪問時、お客様がご在宅>
調査の説明を行い、ご希望の調査日を設定します。調査は当日でも構いません。
<事前訪問時、お客様がご不在>
次回訪問予定日と担当事業所の連絡先を記載した「電気安全調査の事前のお知らせ」チラシを投函いたします。
次回訪問予定日もご不在の場合、屋外にて定められた点検・測定を行い、点検結果(電気安全調査結果のお知らせ)を郵便受けに投函させていただきます。
屋外の点検後に屋内点検をご希望される場合は、「電気安全調査結果のお知らせ」にある連絡先にお電話ください。日程調整のうえご希望の日に改めて調査に伺います。
【ステップ3】 問診
訪問したお客さまとの対話を通して、電気設備の異常の確認を行います。また、お客さまが電気を使用する上で困っていることや疑問にお答えします。
【ステップ4】 屋外の点検
屋外配線の施設状況や門灯など、屋外にある電気設備を点検します。屋外配線付近で、漏えい電流を測定し、漏電の有無を確認します。
※漏電確認は屋内の分電盤で実施する場合もあります。
【ステップ5】 屋内の点検 / 分電盤(ブレーカー)の点検等
分電盤の外観やブレーカー類の施設の状況、破損や過熱、接続のゆるみなどの点検と、状況に応じて漏電の有無の測定をします。
点検内容によっては、停電をお願いする場合があります。希望により、屋内配線や電気器具類などの状態の点検もしています。
【ステップ6】 結果の報告
調査結果をお知らせします。もし不具合があれば、その改修方法及び改修しなかった場合に起こり得る事象等についてお知らせします。
また、電気安全パンフレットを用いて、安全確保のポイント・自己診断方法について説明をします。
電気安全調査で見つかった不具合について具体的に教えてください。
A:調査では実際、さまざまな不具合が見つかっています。
特に分電盤(ブレーカー)は通常フタが閉まっており、目にする機会が少ない(=意識する機会が少ない)ため、分電盤を開けることで、不具合を発見することがあります。
電気安全調査で見つかった不具合の一例
- 分電盤のネジの緩み
- 分電盤の中の接続部が加熱して変色
- 分電盤の中にネズミなどの小動物が入り込んでいる
- 電気コードの破損 など
不具合まではいかなくても「電気コードが椅子に踏まれている」「電気コードが絨毯の下を這っている」「たこ足配線」など危険な状態を確認した場合は、ご指摘し、改善をお願いしています。
「このくらい大丈夫」と軽く考える方も多いのですが、いずれも漏電や火災を招きかねない非常に危険な事例です。
調査員は不具合に対して、「コードをテープで補修する」、「分電盤の小動物を取り除き、清掃」など、簡単な応急処置のみ行います。正式な修理は、電気工事店へ依頼してください。
電気安全調査終了後にお渡しする小冊子「電気安全パンフレット」に電気工事店を紹介していただける「保守センター」の一覧が記載されていますので参考になるかと思います。
電気安全調査を拒否することはできますか?拒否することでデメリットはあるのでしょうか?
A:電気安全調査は、お客さまから承諾をいただいたうえで行う大切な調査です。お客さまが電気を安全にご使用いただくいただために、この機会に、電気安全調査をお受けいただきますようご案内します。
ただし、どうしてもご都合がつかない場合は以下の方法によりお申し出ください。
電気安全調査を拒否する方法
- ・事前訪問時に調査員に伝える
- ・「電気安全調査の事前のお知らせ」に記載されている番号に電話して伝える
拒否することでお客様に不利な事態が発生することはありませんが、「4年に1回の調査を受けない=電気関連の事故を見過ごす可能性がある」と考えてください。
実際、電気安全調査で多くの不具合が発見されている以上、これは大きなデメリットであるといえます。調査は4 年に1 度、たった10 分程度です。皆さんの安全のためにもぜひご協力をお願いいたします。
訪問先を間違うことはないのですか?
A:お客様のご自宅にある電気メーターには固有の識別番号が付いています。
調査員が現地で、お名前、ご住所、識別番号を照らし合わせて調査を行いますので、間違うことはありません。
コロナ対策を行なっていますか?
A:私たちはご自宅に伺って調査を行うため、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、お客さまには大変ご心配をお掛けしていることと思います。
感染防止対策として、マスクを着用し、手洗い、うがい、アルコール消毒などを行っております。また、電気安全調査時の屋内点検については、お客さまのご意向を伺い、お客さまがご希望される場合に実施させて頂きます。
漏電の有無につきましては、電力メーター付近など屋外の測定可能な場所にて確認させて頂きます。なお、屋内の点検をご希望される場合は、その旨を調査員にお申し出下さい。
調査員についてのQ&A
調査員を装った窃盗・詐欺などが心配です。本物の調査員と偽物を見分ける方法はありますか?
A:実際に、電気保安協会や関係会社を装った詐欺・窃盗など悪質な事件が発生しています。悪質な勧誘事例と調査員の見分け方をご紹介しますので、参考にしていただければと思います。
訪問による主な勧誘事例
- 保安協会や関係会社を名乗り「電気の安全調査に参りました」と言って家に上がり込む。
- 点検中、お客さまが目を離した隙に金品を持ち去る。
- 点検後「今すぐ修理が必要」などと言葉巧みに誘導し契約させ、修理代金を請求する。
- 会社名を記載したニセ名札を提示し、「後でお金を払う」と偽って金券をだまし取る。
※調査員は金銭を要求したり、説明もせずご自宅に上がり込んだりすることは絶対にありません。
調査員の見分け方
本物の調査員は常に写真入りの調査員証明書を胸につけています。お客様のご希望があれば、提示することが義務付けられていますので、不安な場合は提示を求めてください。
少しでも不審だと感じたら、九州電気保安協会にご連絡ください。電話番号は以下より確認できます。
調査員はどのような基準で選ばれているのですか?きちんとした人が来てくれるか不安です。
A:調査員は「電気工事士」や「電気主任技術者」などの国家資格を有したものが点検に伺います。また、調査の質の向上を目指し、調査員の教育にも力を入れています。
九州電気保安協会の教育制度
- 入社後の全員研修
- 現地でのOB の指導
- 入社2 年後に再び全員研修
さらに、定期的に安全パトロールがお客様への対応を抜き打ちでチェックします。
お客様の元へは、確かな教育を受けた調査員がお伺いいたしますのでご安心ください。
調査員は何人できますか?
A:調査員は基本的に1 人でお伺いします。
※稀に安全パトロールのスタッフが同行していることがあります。
女性の調査員さんはいらっしゃいますか?
A:たまに「女性がいい」と指定される方がいらっしゃるのですが、現在、女性の調査員は九州に1人しかいません。男女問わず、きちんと教育を受けた調査員が伺いますので安心しておまかせ下さい。
お茶を出した方がいいのでしょうか?
A:お気持ちだけで十分です。ありがとうございます。
電気安全調査員からのメッセージ
現在はコロナ禍です。ご自宅にご年配の方がいるなど、調査そのものにご不安を感じている方も多いのではないでしょうか?
調査に関して無理強いをすることは絶対にありません。お客様のご希望に沿う形で行いますので、思うことがあれば遠慮なくおっしゃってください。
そして調査員に対して「怪しい」「信頼できない」と感じたら、すぐにお電話ください。それがお互いのためであると思っています。
「屋外の調査だけを受けたけどやっぱり不安」そんな方もお気軽にご相談ください。屋内調査を行っていない場合、いつでも再調査にお伺いできます。
電話やホームページのお問い合わせフォームからの相談も大歓迎です。「最近スイッチが熱を持つ」「ブレーカーがよく落ちる」、そんな些細なことでも大丈夫です。実際、九州電気保安協会のホームページには年間100 件ほどさまざまなお問い合わせが寄せられています。
九州電気保安協会は、お客様のすぐそばにいる身近な電気のアドバイザーです。私たちにできる範囲で精一杯お答えさせていただきますので、気軽に頼ってくださると嬉しいです。
取材協力:
一般財団法人 九州電気保安協会
九州電気保安協会本部
〒812-0007 福岡市博多区東比恵3 丁目19 番26 号 QDH ビル
TEL:092-431-6701(代) / FAX:092-431-6717
最後に(取材後の感想)
私たちは仕事柄、電気安全調査について知っている“つもり”でした。
しかし、今回、九州電気保安協会様にお話を伺い、私たちが考えていた以上に電気安全調査が重要な役割を担っていることが分かりました。
電気が原因の火災や事故は毎年数多く発生しています。現在頻発している災害時はさらに危険。地震後に発生する火災の大半が「電気火災」だからです。
その原因を発見し、電気火災・事故を未然に防ぐ電気安全調査は私たちの安全・安心な生活、財産、命を守ってくれているといっても過言ではないのです。
一般の利用者が不安に思う気持ちもわかりますが、調査員さんもそれは承知しています。お客様のご希望を優先した上で、「安心して調査を受けていただけるように」と最大限の配慮・対策を行なっています。コロナ禍においてはそこに感染症対策も加わるわけですから、ご苦労は並大抵なものではありません。
今回の記事を読めば電気安全調査に関する不安・疑問は解消できると思います。4年に1回、10分程度、ぜひご自分やご家族の安心・安全のために電気安全調査を受けましょう。