ニュースやインターネット上で、「今夏、電力不足。数年で最も厳しい見通し」という情報が続々と発信されています。
- 日本経済新聞:夏の電力需給「数年で最も厳しい」経産相、冬は不足も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA141MP0U1A510C2000000 - 朝日新聞:(社説)電力不足予想 需給の安定へ抜本策を
https://www.asahi.com/articles/DA3S14924871.html
2020年12月〜今年1月の電力不足、電力市場高騰を思い出し、不安になっている人も多いのではないでしょうか?
これズバリ、事実です。
実は今年の夏(7〜9月)、冬(12〜2月)の電力不足は、原発事故の影響で計画停電が頻繁に行われた東日本大震災後に匹敵するともいわれています。
そして、それが日本全域で起こると予想されているのです。
2021年の夏季需給の見通し
表中「供給予備率」をご覧ください。予備率とは「電力需要のピークに対し、供給力にどの程度の余裕があるかを示す指標」のこと。
簡単にいうと電力会社の余力ですね。見方は以下の通り。
- 7〜10%:電力の安定供給が保たれる
- 4%前後:要注意
- 3%前後:電力不足に陥る危険あり
これを踏まえた上で、もう一度表をご覧ください。
北海道と沖縄を除き、要注意、危険数値のオンパレード!本州全て同じような状況ですから、助け合いも難しい状況です。
もちろん、国も様々な対策を講じていますから、不安になりすぎる必要はありませんが、日本国民一人一人が「電力不足」を意識し、節電等に協力することが求められています。
今回は「日本がなぜ電力不足になるのか」、そして「一般の電気利用者に何ができるのか」をご紹介します。
電力不足の主な原因は「採算が合わない」から
今回の電力不足の一番の原因は、日本の全発電電力量において未だに大きな割合を占める「火力発電」の減少。全国で火力発電所の休廃止が相次いでいるのです。
休廃止の理由は明快。稼働しても「採算が合わない」からです。
火力発電所は他の発電施設に比べ、施設の維持・運営にお金がかかります。電力自由化以降、「卸電力市場の取引の拡大」、「再エネ電気の増大」により、卸電力市場における電力の取引価格は低迷しています。
また、春・秋の太陽光発電が多く発電する時間帯(晴天時の昼間)は電気が余るため、火力発電所も出力を落として稼動する必要があります。
引用:資源エネルギー庁 再エネの大量導入に向けて ~「系統制約」問題と対策より
そのため発電しても安い金額でしか売れない、連続稼動したくてもできない(=採算が合わない)ので、この事業から手を引く発電事業者が増えているのです。
ここまで読んで、「国は再生可能エネルギーの普及を推進してるんだから、火力発電所が減った分、再生エネルギーを使った発電を増やせばいいじゃないか!」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?
もちろん、理想はそうなのですが、、、現実は簡単にはいきません。
しかし「再生可能エネルギーの普及」のためにも火力発電所は必要
ご存知のように世界は「脱炭素社会」を目指し、太陽光など環境にやさしい「再生可能エネルギーの普及」を推進しています。
発電時CO2を排出する火力発電はその対極にあるといっても過言ではありません。日本も「火力発電」を減らし、「再生可能エネルギーをつかった発電」を増やす方針をとっています。
しかし、再生可能エネルギーはとても不安定なエネルギーです。太陽、風、水、地熱など自然界のものですから、天候や季節に大きく左右されてしまうのです。
太陽光発電は不安定
- 夜
発電できない - 雨や曇り、台風などの悪天候時
発電量が落ちる - 電力使用量の多い「夏・冬」
発電量を需要が上回り、電力不足が懸念される - 電力使用量の少ない「春・秋」
発電量が需要を上回り、頻繁に出力抑制※が行われる
※需要と供給のバランスが崩れると「停電」などの不具合が生じるため、送配電事業者より発電を一時的に止めるよう要請がくる
電力過多になる「春・秋」に発電した電気を貯めて、電力不足なりがちな「夏・冬」に使えればいいのですが、現在の技術では電力を長期間保存することはできません。
再生可能エネルギーが完全に普及するまでは、電力の安定供給のための「調整役」として、安定した電力供給ができる電源、つまり火力発電が必要なのです。
電力不足に対する国の対策
電力不足に対して国も手をこまねいているわけではありません。さまざまな対策を講じています。
①供給対策(発電事業者への要請)
- 保安管理の徹底、計画外停止の未然防止
- 燃料の十分な確保
②市場対策(小売り電気事業者への要請)
- 電力卸市場価格が高騰しないよう、市場安定化のためセーフティネット措置を行う
予備率3%までは上限80円/kWh、3%を切ると上限200円/kWh(2022年度は予備率に応じて変更予定)
- 電源調達:ひっ迫に備え、供給力確保やリスクヘッジが重要
小売電気事業者へ相対契約・先物取引等の拡大、デマンドレスポンス契約の拡充を要請
③需要家(電気利用者)への呼びかけ
- 省エネ等への協力要請
④火力発電所への対応
- 火力発電所の休廃止の制限
平成28年4月の法改正で、「発電所の休廃止」が“許可制”から“届出制”に変わりました。つまり、採算が取れないと判断した発電事業者がやめたいと思えば、国の許可なく、いつでも、簡単に休廃業できるようになったのです。その結果、国は火力発電所の休廃止をコントロールできなくなり、電力不足に拍車がかかることになりました。電力不足を解消するために、現在は電力需要に影響を与え得る一定規模以上の発電所を対象に、休廃止に制限を設ける案が検討されています。
- 容量市場の創設
容量市場とは、電力量(kWh)ではなく、将来の供給力(kW)を取引する市場のこと。容量市場では、発電所の建設・運営に必要な固定費の一部を小売電気事業者全体で負担するシステムが構築されています。容量市場は、すでに2020年から準備がはじまっており、2024年から運用開始の予定です。
電力不足は、国民全員で考えるべき社会問題
私たち新電力おおいたは今回の電力不足を、国、業界全体、国民全員で考えるべき「社会問題」であると考えています。
電力が不足すれば停電が起こります。停電は日々の生活や経済活動に大きな影響を及ぼします。停電中はトラブルや事故も起こりやすくなるでしょう。心を病む人、怪我を負う人、命を失う人もいるかもしれません。
電気は私たちの暮らしの基盤を支えています。だからこそ、国や業界に責任を押し付けて「はい、終わり」ではなく、私たち一人一人が電力不足を“自分たちのこと”として捉え、行動する必要があるのです。
電力不足に対し、電気を使う“私たち”にできること
国でもなく、発電事業者でもなく、電気利用者であるみなさんだからこそできる「電力不足対策」があります。
簡単で、しかも、お金も浮く方法です。
省エネ・節電
「電気を売って儲けている新電力なのに、省エネ・節電を勧めるの!?」と驚く方もいるかもしれませんね。確かに商売としては、バンバン電気を使っていただいた方が儲かります。
しかし、先述したように電力不足は国民全員で考えるべき「社会問題」です。目先の利益に走るより、中長期的な目線で「電力の安定供給」に協力することが重要であると考えています。
省エネ・節電の一例
- 家族で一緒の部屋で過ごす
- コンセントからプラグから抜く
- エアコンの室外機の周りに物を置かない
- 冷蔵庫の設定を強から中へ変更する
- 古い家電を買い替える(蛍光灯⇒LED、電気温水器⇒エコキュートなど)
盲点なのが「古い家電の買い替え」。
現在の家電は驚くほど進化しています。特に「省エネ」に関しては優秀で、10年ほど使った冷蔵庫を最新の冷蔵庫に買い換えて、月1,000円も電気代が安くなったという人がいるほどです。だいたい15年で元が取れる計算になったそうです。
新電力おおいた社員・節電マスターの場合
実は、新電力おおいたには「節電マスター」の異名をとる、節電のプロがいます。5人家族で、月の電気代は平均4,200円!!
電気代があまりにも安いので、一時「ロウソクで生活してるんじゃないか」という噂が立ったほどですw
電気の使い方を変える
電気の使い方や使う時間帯を変えると省エネ・節電になるだけでなく、再生可能エネルギーを有効活用することができます。
①昼間に電気を使う
昼間の電力量料金単価が高い、オール電化のご家庭にはお奨めできませんが、それ以外のご家庭であれば、ぜひ晴天時の昼間に電気を使ってください。
近年は太陽光発電が普及し、特に電力需要の少ない春・秋は電力過多の状況が発生しています。需要と供給のバランスを保つために、太陽光発電に対して出力抑制(一時的な発電停止)の要請がでることも少なくありません。
昼間に電気を使うことで、貴重な再生可能エネルギーを有効活用することができます。
<特に「卒FIT」を迎えたご家庭にオススメ>
余剰電力を買い取ってもらうより、太陽光で発電した電気を昼間自家消費した方が断然お得です。
例えば、深夜沸かしているエコキュートを昼間稼働した場合:7円/kwh※で買い取ってもらうはずの昼間に発電した電力で沸かすため、15.25円(消費税10%、再エネ賦課金含む)の深夜電力で沸かすより8.25円/kWhもお得!! ※固定価格買取制度が満了となった太陽光発電の九州電力様の買取価格
新電力おおいたでは、卒FITを迎えたご家庭向けに、昼間の電力を有効活用するSUN給プランをご提案しています。興味のある方は以下より詳細をご覧ください。
- 再生可能エネルギーの有効活用
- 経済的で効率的な電力の自家消費
- 余剰電力の売電(10円/kWh)
②太陽光発電+蓄電池を活用する
昼間太陽光で発電した電気を蓄電池に貯め、夜利用。この方法なら「電気代0円」も夢ではありません。
蓄電池が高額なのが難点ですが、この“自給自足”が究極のゴールだと思っています。私たちの仕事はなくなりますが(笑)
まとめ
電力不足は一過性の問題ではありません。現在、火力発電所が担っている再正可能エネルギーの変動を吸収し、融通できる調整力の問題を解決しない限り、今後も継続することが予想されます。
何度もいいますが、電力不足は日本国民全員に影響が及ぶ「社会問題」です。国も、電気事業者も、電気利用者も、全員が“自分たちのこと”と捉え、それぞれの役割を果たす必要があるのです。
私たち新電力おおいたの役割は、ただ国が定めた制度に則るだけでなく、自分たちで考え、正しい情報、求められているものを精査して発信・企画・実行していくこと。
ブログを使っての情報発信もその一環ですし、みなさんが無理なく、楽しんで節電できるよう、イベントを開催したいとも思っています。
最終的な目標はもちろん、電気の安定供給と再生可能エネルギーの普及。ゴールを目指し、新電力おおいたはこれからも全力で走り続けるつもりです。