気づいていない人も多いのですが、、、私たちが支払う電気代には「燃料費等調整額」というものが含まれています。
これは電気使用者全員に共通するものであり、電気代のお知らせ(検針票)には、地域、契約電力会社に関わらず、必ず同様の記載があります。
月によってマイナスになったり、プラスになったりする謎の数字を見て、不思議に思っていた方もいるかもしれませんね。
今回は電気使用者全員に関わることでありながら、意外と知らない人が多い「燃料費等調整額」について詳しくご説明します。
燃料費等調整額とは
燃料費等調整額は、燃料費調整単価と離島ユニバーサルサービス調整単価に、ご使用量を乗じたものから構成されています。今回は、その主体となる燃料費調整単価について、詳しく説明を行います。
火力発電に使う燃料(石油、石炭、LNG)の輸入価格は常に変動しているため、その変動分を電気料金に迅速に反映させるため、平成8年1月から「燃料費調整制度」が導入され、この制度によって毎月の金額が決まっています。
飛行機の燃料価格に応じて運賃に追加される燃油サーチャージ(燃油特別付加運賃)のようなもの、、、といえばわかりやすいかもしれませんね。
燃料費調整単価は「基準となる平均燃料価格」と、3ヶ月間の貿易統計価格にもとづいて算出した「実際の平均燃料価格」によって決まります。
- 基準を実際の平均燃料価格が上回った場合
平均との差額をプラス調整=電気代にプラスされる - 基準を実際の平均燃料価格が下回った場合
平均との差額をマイナス調整=電気代からマイナスされる
2016年4月1日以前から契約していた方は平均燃料価格に上限が設けられており、41,100円と決められています。ただし、それ以降に契約した方は上限が撤廃されております。
上限が撤廃されたからといって、好きなだけ電気代を上げてよくなったというわけではありません。
あくまで「平均燃料価格の上昇に応じて設定される金額」ですので、ガソリンの価格がじわじわと上がっているのと同じく、燃料調整額も急に何倍にも膨れ上がることはありません。
燃料費等調整額は電気代に含まれているため「電気代にプラスして支払わなければいけない」と思っている方が多いのですが、実はマイナス、電気代から引かれることもあるのです。
燃料費等調整額は、私たちの生活にどのような影響を及ぼすのか
現状はマイナス調整になる月が多く、毎月ごとの変化が少ないので、気が付きにくいかもしれませんが、最近は少しずつ燃料調整単価が上がってきているので、「電気代が上がった」と感じている方もいるかもしれません。
燃料費の輸入価格はいつ・どうなるか分かりません。そこで、例えば実際の平均燃料価格が41,100円になった場合(電気代が増える)と、13600円になった場合(電気代が減る)で比較し、実際の負担額がどの程度変化するかを考えてみましょう。
1ヶ月300/kWh使用した場合の比較
- 基準とする平均燃料価格が17400円の場合(下回る場合)
(27400-13600)×0.136/1000=1.87
マイナス調整 -1.87
支払う燃料費等調整額 -1.87×300/kWh=-561円
- 基準とする平均燃料価格が41100円の場合(上回る場合)
(41100-27400)×0.136/1000=1.86
プラス調整 +1.86
支払う燃料費等調整額 +1.86×300/kWh=+558円
月の電気代の差額はなんと1,119円!
電気の消費量が多い会社や工場、店等であればその差額はさらに大きくなります。こうなってしまうと決して小さな差とはいえません。
燃料費調整制度は国が定めたものですから、変えることはできません。しかし、電気代そのものを安くすることはできます。
- 電気代の安い新電力を探して乗り換える
※詳しくは「電力会社は選べる時代へ「新電力しませんか?」」をご覧ください - 節電の意識を高める
※詳しくは「今すぐできる節電術!電力のプロ、新電力社員が実践する節電方法をご紹介」をご覧ください
大切なのは、電気代の内訳を知り、意識することです。新電力おおいたのブログでもご紹介していますので、ぜひ実践してみてください。
2019年1月〜2022年7月の燃料費等調整額
各月の燃料調整単価と、1ヶ月に300kwh使用した場合に負担する燃料費等調整額
各月の燃料調単価 (2019~2020) |
300kwh使用した場合に負担する燃料費等調整額 |
各月の燃料調整単価 (2021~2022) |
300kwh使用した場合に負担する燃料費等調整額 |
||
2019年1月 | 0.05 | 15円 | 2021年1月 | -1.87 | -561円 |
2019年2月 | 0.21 | 63円 | 2021年2月 | -1.87 | -561円 |
2019年3月 | 0.25 | 75円 | 2021年3月 | -1.77 | -531円 |
2019年4月 | -0.05 | -15円 | 2021年4月 | -1.61 | -483円 |
2019年5月 | -0.14 | -42円 | 2021年5月 | -1.38 | -414円 |
2019年6月 | -0.22 | -66円 | 2021年6月 | -1.25 | -375円 |
2019年7月 | -0.27 | -81円 | 2021年7月 | -1.12 | -336円 |
2019年8月 | -0.36 | -108円 | 2021年8月 | -1.05 | -315円 |
2019年9月 | -0.47 | -141円 | 2021年9月 | -0.82 | -246円 |
2019年10月 | -0.57 | -171円 | 2021年10月 | -0.57 | -171円 |
2019年11月 | -0.63 | -189円 | 2021年11月 | -0.28 | -84円 |
2019年12月 | -0.7 | -210円 | 2021年12月 | -0.01 | -3円 |
2020年1月 | -0.74 | -222円 | 2022年1月 | 0.33 | 99円 |
2020年2月 | -0.82 | -246円 | 2022年2月 | 0.88 | 264円 |
2020年3月 | -0.84 | -252円 | 2022年3月 | 1.33 | 399円 |
2020年4月 | -0.86 | -258円 | 2022年4月 | 1.55 | 465円 |
2020年5月 | -0.88 | -264円 | 2022年5月 | 1.7 | 510円 |
2020年6月 | -0.92 | -276円 | 2022年6月 | 1.85 | 555円 |
2020年7月 | -0.98 | -294円 | 2022年7月 | 1.92 | 576円 |
2020年8月 | -1.07 | -321円 | |||
2020年9月 | -1.22 | -366円 | |||
2020年10月 | -1.42 | -426円 | |||
2020年11月 | -1.6 | -480円 | |||
2020年12月 | -1.77 | -531円 |
青色が燃料費等調整額がマイナス調整されている月で、赤色がプラス調整されている月です。電気代から“引かれている”月がほとんどだということがわかりますね。
しかし、よくみると2020年末をピークに2021年から値上がりを続けています。2022年に入ってからは、遂にプラス調整へと転じてしまいました。これは原油価格の高騰が影響しています。
ウクライナ情勢悪化による影響もこれから現れるといわれており、値上げは今後も続く見込みです。
燃料費調整額は電力会社によって異なる場合もある。
実は、燃料調整額はすべての電力会社で同一ではありません。電力会社ごとに決めることが出来るのですが、基本的には国が定めた「燃料費調整制度」に従って算定された金額を設定しています。多くの新電力は地域指定の電力会社(大分県の場合は九州電力様)の燃料調整額と同額に設定しています。
しかし、中には独自に燃料調整額を算定している電力会社もありますので、契約前に必ず確認するようにしてください。独自に燃料調整額を算定している電力会社の中には、市場価格を燃料調整額に反映しているケースがあります
燃料調整額は値上がりを続けているものの、通常の算定方法であればせいぜい前月対比で数十円~百円(使用量300kw/月の場合)程度の増額にとどまりますが、独自に燃料調整単価を算定している会社では、市場価格高騰時に数千円~数万円程も増額することがあるため、注意が必要です。
ミスリードに要注意!新聞などでの「◯◯電力、電気代値下げ」の見出しは、ほぼ燃料費調整額の値下げのこと
普段あまり気にすることのない燃料費調整額ですが、実は意外なところでその動向を目にしています。
新聞に頻繁に掲載される「◯◯(地域指定の電力会社)、電気代値下げ」という見出し。見たことがあるという人がほとんどではないでしょうか?
そして「あ、また◯◯(地域指定の電力会社)が値下げしてる。やっぱり新電力はダメだな」と思いませんでしたか?
これ、ものすごいミスリードです。なぜならこの値下げは、ほとんどの場合 “燃料費等調整額の値下げ”を指しているからです。
燃料費等調整額は地域・契約電力会社に関わらず、電気使用者全員の電気代に含まれているからです。つまり同じ燃料費等調整単価を適用している会社どうしであれば、同様に値下げをすることになるのです。
決して〇〇電力だけが安くなっているわけではありません!
新聞を見て慌てて「電力会社を変えたい」という人もいますが、まずは新聞記事をじっくり読んで、それが“何の”値下げなのか確認しましょう。
まとめ
電気代には実際に皆さんが使用した電気使用料金の他にもさまざまなものが含まれています。
<電気代の内訳>
基本料金+電力使用料金+再生可能エネルギー発電促進賦課金+燃料費調整額
※他、電力会社独自の割引サービスなど
今回ご紹介した「燃料費等調整額」は、火力燃料費(原油・液化天然ガス・石炭)の変動によって決まるものです。
「電気代が急に高くなった」
「電力会社を乗り換えたら、電気代が上がった」
「去年と比べて電気代が1.5倍に」
そう思ったら、まずは電気代の詳細が書かれた検針票を見て、以下の点をチェックしてみてください。
- 電気をいつもより多く使っていませんか?
猛暑、寒波などの時は冷暖房で電力をたくさん使うので要注意 - 再エネ賦課金が以前と比べて高くなっていませんか?
- 燃料費調整額が以前と比べて高くなっていませんか?
電気代が高くなった原因が「再エネ賦課金」や「燃料費等調整額」であれば、電気代を安くするために電気使用量を減らす努力をしてみてはいかがでしょうか。
電気代の詳細を知り、電気に意識を向けることが、電力不足の解消や地球環境の保護につながるのです。